携帯電話のデータ通信サービスを展開するイー・モバイルが、今月末で事業開始から1年を迎える。“データ通信での利用者獲得は困難”との前評判を覆し、今月には目標の初年度30万件加入を達成、携帯電話業界に新風を吹き込んだ。28日には音声通話サービスも開始するが、NTTドコモなど既存3社の壁を崩すことができるか。(黒川信雄)
イー・モバイルは平成17年11月にソフトバンク子会社のBBモバイル、通信ベンチャーのアイピーモバイルとともに携帯電話事業へ新規参入する免許を獲得。その後、ソフトバンクがボーダフォン日本法人を買収し新規免許を返上。アイピーモバイルも資金繰りに失敗し、イー・モバイルだけが昨年3月、携帯情報端末とカード型データ通信端末でサービスを開始した。
当時、携帯電話の電波を使うパソコン向けデータ通信は料金が高額のため敬遠されていたが、PHS以外で初めて定額制を採用。「3・5世代」と呼ばれる高速通信にも対応させ、サービス開始5カ月で10万契約を獲得した。12月には国内最速となる受信毎秒7・2メガビットへさらに高速化。定額・低料金化ではNTTドコモとKDDIを追随させ、競争に火をつけた。
懸念されたサービス提供エリアは、昨年末に人口カバー率50%に到達。今年6月末には75%を超える予定という。携帯電話事業の全国展開は多額の設備投資を要するが、イー・モバイルの千本倖生(さちお)会長は「サブプライムローン問題で金融市場が冷え込む前に、増資や借入枠で約3600億円の事業資金を確保できたことが大きい」と述べ、資金調達のタイミングの良さも成功の要因とアピールする。
新たに始める音声サービスは「既存3社と真正面からぶつかっても厳しい」(千本会長)ため、インターネット接続などのデータ通信加入を必須として同社の強みを生かす新戦略で打って出る。端末には世界で100万台規模の販売実績がある台湾HTC製スマートフォン「イーモンスター」を投入。国内メーカー製にない使い勝手を提案し、発売前ながらIT機器に詳しい若者やビジネスマンの関心を集めている。
ただ、1億台を超える携帯市場でシェアはまだ0・3%に過ぎない。音声サービスについても「データ通信契約を必須とする契約は利用者に受け入れられにくい。サービスエリアもまだ狭い」(通信業界に詳しい証券アナリスト)と指摘する向きもある。2年目を迎えても、利用者の支持を得られる新サービスが求められている。
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